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京都地方裁判所 昭和63年(行ウ)30号 判決

京都府船井郡八木町字永所小字前所五番地

原告

中川廣光

右訴訟代理人弁護士

小川達雄

籠橋隆明

京都府船井郡園部町小山東町溝辺二一の二

被告

園部税務署長 奥田純

右指定代理人

阿多麻子

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、原告に対し、昭和六二年七月八日付でした原告の昭和五九年及び昭和六〇年分の所得税更正処分(ただし、各年分とも異議決定により一部取消後のもの)のうち、昭和五九年分は別紙1(課税の経緯)の確定申告欄の総所得金額を、昭和六〇年分は別紙3の2の合計所得金額欄の金額を、それぞれ超える部分及びこれに対する過少申告加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。

第二事案の概要

一  請求の類型(訴訟物)

本件は、原告が、被告のした昭和五九年及び昭和六〇年分(以下「本件係争各年分」という。)の各所得税更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)に調査手続上の違法及び総所得金額を過大に認定した違法があるとして、その取消を求めた抗告訴訟である。

二  前提事実(争いがない事実)

1  原告は、肩書地記載の住所地(以下「原告方」という。)において、「八木電器製作所」の屋号で電気部品の組立製造業及び農業を営む、いわゆる白色申告者である。

2  本件係争各年において、原告が訴外星電精工株式会社(以下「星電精工」という。)から受注して生産していたソレノイドという製品は、専ら星電製工の製品であり、ソレノイドの受注製造をするものは、星電精工から受注した事業主に限られる。

3  原告の本件係争各年分の所得税の確定申告、更正処分、異議申立て、異議決定、審査請求及び裁決の経緯は、別紙1(課税の経緯)記載のとおりである。

三  争点

1  調査手続の適法性

2  本件各処分における推計の必要性

3  本件各処分における推計の合理性

4  実額反証

四  原告の主張

1  調査手続の適法性(争点1)

被告は、次の違法な税務調査に基づき本件各処分をした。

(一) 調査を行う客観的、具体的必要性がないのに調査を実施した。

(二) 事前通知をしない。

(三) 調査年分の告知及び調査年分を変更する際におけるその変更の告知をしない。

(四) 調査理由の開示をしない。

(五) 第三者の立会いを認めない。

(六) 納税者自身に対する調査を十分に行わず、しかも同人の承諾もなく取引先に対する反面調査を行った。

(七) 右反面調査は、原告と取引のない者についてまで行われ、原告に著しい営業上の不利益をもたらした。

2  本件各処分における推計の必要性(争点2)

被告の原告に対する推計課税は、前示違法な税務調査によるものであり、しかも、調査を十分に尽くしたものとはいえないから、これについては、そもそも推計の必要性がない。

3  本件各処分における推計の合理性(争点3)

(一) 被告が抽出した四業者と原告とでは、業種、業態が異なり、類似性がない。

(1) 原告は個人業者であるのに対し、抽出同業者は法人である。

(2) 本件係争各年当時の原告の事業内容は、ほとんどソレノイドの受注製造の専業であるのに対して、抽出同業者は、他の電気部品の組立製造との兼業であり、しかも、抽出同業者の総売上高のうちソレノイドの売上の占める割合は別紙2のとおり低い。

特に、別紙2のA業者とB業者は、原告と比較し、総売上高のうちソレノイドの売上の占める割合や所得率が著しく異なり、右二業者は、原告と全く類似しない。

(3) ソレノイドの受注製造は電気部品組立製造業のなかでも極めて利益率が低いところ、右のとおり、原告のソレノイドの売上高が総売上高に占める割合は高いのに対し、抽出同業者は低い。

したがって、原告と、他に取引先を有する抽出同業者とでは利益率の点で大きく異なり、本件推計は合理性に欠ける。

(二) 原告と抽出同業者との事業年度の期間の違い

抽出同業者は、いずれも法人であり、原告とは、一事業年度の始期と終期が異なる。すなわち、例えば、原告は、昭和五九年分が、同年一月一日から一二月三一日となるが、抽出同業者のなかには、右年分の事業年度の期間が昭和五八年一一月一日から昭和五九年一〇月三一日までなど種々である。

そのため、右抽出同業者の算出所得率をもとに、原告の事業所得金額を算定することは不合理である。

(三) 特別経費

(1) 建物減価償却費

イ 被告は、建物減価償却費の対象となる建物は、倉庫(未登記)及び居宅兼作業場(登記原因 昭和五三年七月一日新築)(乙一〇)と主張する。

しかし、右建物のうちの倉庫は、本件係争各年当時、既に取り壊され、右両建物の他に別の建物(甲八二五)が存在していた。

そこで、被告は、本件係争各年分の減価償却費として、右倉庫ではなく、右建物(甲八二五)についての建物減価償却費を計上すべきである。

したがって、被告の主張する建物減価償却費は正確ではない。

ロ 建物減価償却費の計算方法については、被告の主張を認める。

(2) 利子割引料

被告の主張を認める。

4  実額反証(争点4)

原告の本件係争各年分の売上金額、売上原価、必要経費、差引所得金額、その他の所得金額及び合計所得金額は、別紙3の1、2の本件各係争各年分の各欄記載のとおりである。

そうすると、本件各処分の認定した別紙1記載の所得金額は、右実額による所得金額に比べて過大であるから、被告のなした推計課税は、違法であり、取消を免れない。

五  被告の主張

1  調査手続の適法性(争点1)

質問検査権の範囲、程度、時期、方法等は、税務職員の合理的な選択に委ねられており、調査の事前通知、理由の告知等も、その要件ではない。反面調査の要否も税務署員の合理的選択に委ねられている。

本件税務調査手続に、社会通念上相当な限度を超えた違法な点はない。

2  本件各処分における推計の必要性(争点2)

(一) 被告は、部下職員(以下「職員」という。)をして、昭和六一年一〇月一四日から昭和六二年三月までは昭和五八年分ないし昭和六〇年分、昭和六二年四月から昭和六二年七月六日までは、昭和五九年分ないし昭和六一年分の原告の所得税の調査に当たらせた。その際、職員は原告方に合計七回臨場し、そのうちの六回は原告に対し、帳簿書類の提示等税務調査に対する協力を求めた。しかしながら、原告は、第三者の立会いのない場所で帳簿書類を提示することを許否するなどして税務調査に協力しなかった。

(二) このため、被告は、やむを得ず、原告の取引先等に対する反面調査によって把握した資料をもとに、推計により算定した金額に基づき本件各処分を行った。

(三) したがって、本件につき、推計の必要性が存在する。

3  本件各処分における推計の合理性(争点3)

(一) 同業者の抽出経緯等

被告は、平成元年一月頃から二月頃にかけて、園部税務署管内及びその周辺署管内で、原告と同種の部品を製造している業者が存在するかどうか確認したが、かかる同業者を見つけることができなかった。そこで、星電精工に対して調査を行い、原告と同じく、材料の有償支給を受けてソレノイドの部品の組立製造を行っている七業者を把握した。

被告は、これらの七業者の中から、事業内容が、より原告と類似し、かつ数値に正確性のある業者を選定するため、別紙4の〈1〉ないし〈5〉の条件を設定し、前記七業者の確定申告書及び同申告書に添付された損益計算書(以下「決算書」という。)を本件係争各年分を通じて取り寄せたうえ、これらの業者が右条件をすべて満たしているかどうかを確認することとした。

被告は、平成元年四月頃、前記七業者の納税地を所轄する富田林税務署(二件)、和田山税務署(二件)、兵庫税務署(一件)及び八尾税務署(一件)及び岡崎税務署(一件)から、これらの業者の決算書を取り寄せて、これらの業者が前記各条件を全て満たしているかどうかを検討確認した結果、別紙5記載の同業者A、B、C及びDを抽出した。

そうしたところ、原告は個人であって右四業者が法人であることから、大阪国税局長は、個人営業と法人事業との差異を調整するため、各抽出同業者らを管轄する各税務署長に対し、別紙6のとおりの調整事項を付して右四業者の売上金額、売上原価及び一般経費等の金額について報告を求めた。そして、その報告額に基づき、個人換算のための調整をして「個人換算金額」を算出したうえで(別紙7の1ないし6、別紙8及び9)、別紙5の各欄記載のとおり、右同業者の、本件係争各年分における、売上金額、売上原価、算出所得金額(売上金額から特別経費である建物減価償却費、利子割引料、地代家賃、貸倒金、税理士報酬、固定資産等の除却費以外の必要経費を控除した金額)、算出所得率(売上金額に占める算出所得金額の割合)を算出した。本件係争各年分の右同業者の右各算出所得率の平均値(以下「本件算出所得率」という。)は、別紙5の本件係争各年分の「平均」欄及び別紙10の〈2〉の本件係争各年分の「算出所得率」欄記載のとおりである。

(二) 抽出同業者との業種、業態の違い

(1) 原告が個人で、抽出同業者が法人である違い

原告は、原告と抽出同業者では、個人と法人という業態の違いがあると主張するが、個人と法人との間に本質的な差異はなく、個人と法人とで根拠法令が異なることにより、取扱に違いが生じる点は、税法上の規定に基づき合理的に調整すれば足りる。

そして、別紙7の1ないし6及び別紙8及び9のとおり調整を行っている本件では、抽出同業者が法人であるということは、推計の合理性に影響しない。

(2) 原告と抽出同業者の、ソレノイドの受注製造による売上が総売上高に占める割合の違い

原告は、自らがソレノイドの受注製造をほとんど専業としているのに対し、抽出同業者は、他の電気部品の組立製造との兼業であり、しかも、抽出同業者は、総売上高に占めるソレノイドの売上高の割合が低いと主張する。

しかし、本件では、ソレノイドの受注製造をしている業者であること、電気製品組立製造以外の事業を行っていないことを同業者の抽出条件としており、右条件により抽出された本件抽出同業者は、原告とその業種、業態において類似性が保たれている。

(3) 原告と抽出同業者の利益率の違い

ソレノイドの受注製造が、他の電気部品の組立製造業よりも利益率が低いというのは、合理的理由も根拠もない。

(三) 営業所得金額の計算

(1) 売上金額

原告の売上金額は、星電精工及び訴外八栄電機株式会社(以下「八栄電機」という。)に対するもので、昭和五九年分が、金一億〇九三七万六二三九円、昭和六〇年分は金一億三八七四万二一四六円である(別紙10の〈1〉「売上金額」欄)。

(2) 算出所得金額

算出所得金額は、右各売上金額に、本件算出所得率を乗じて算出した。その金額は、別紙10の〈3〉「算出所得金額欄」記載のとおりである。

(3) 特別経費の額

イ 建物減価償却費

原告は、倉庫(未登記)と、居宅兼作業場(乙一〇)を有する。そして、右居宅兼作業場の事業専用割合は五〇パーセントである。

そうすると、右倉庫と、右居宅兼作業場の事業用に使用している部分の減価償却費は、別紙10の〈4〉「建物減価償却費」欄に記載のとおりとなる。

なお、同減価償却費の算出方法は、右各資産の取得価格、取得年月日が不明であるから、同資産の固定資産評価台帳記載の決定価格を取得価格とみなし、倉庫の取得価格を二五万八七〇〇円、居宅兼作業場の取得価格を八四二万三〇〇〇円として、別紙11記載の方法で算出した。

ロ 利子割引料

原告が本件係争各年に支払った事業用借入金の利子割引料は、別紙10の〈5〉「利子割引料」欄記載のとおりである。

なお、京都銀行八木支店からの昭和五八年一一月九日付けの一一〇〇万円の借入金は、昭和五三年八月二三日付けの借入金一五〇〇万円についての未払残債務金五〇一万六〇〇〇円の借換分を含むものであるが、右一五〇〇万円の借入金は、前記居宅兼作業場の取得費用を含む。そこで、原告の当該利子割引料は、右一一〇〇万円の借入金に対する利子から、前記居宅兼作業場の取得費用にかかる家事費相当分を控除して算出される(別紙12の1、2)。

(四) 農業所得金額の計算

原告の農業所得金額は、原告が被告に提出している確定申告書記載のとおり認められる。その金額は別紙10の〈8〉「農業所得金額」欄記載のとおりである。

(五) 総(事業)所得金額

原告の総(事業)所得金額は、別紙10のとおり、営業所得金額(前記(三)(2)の算出所得金額から同(3)の特別経費の額を控除した金額)と農業所得金額の合算して得られた金額(別紙10の〈9〉「総(事業)所得金額」欄記載)である。

4  原告の実額反証(争点4)に対する反論

納税者が推計課税において認定された所得金額を実額の反証によって覆すためには、その主張する収入金額がすべての取引先とのすべての取引によるものであること及びその主張する必要経費が実際に支出され、右収入と対応するものであることを立証しなければならない。

ところが、原告は、収入金額については、被告が原告の所得推計の根拠として主張している額をそのまま引用するなど、その全てを実額で主張、立証しているわけではないし、また、必要経費の額についても、信頼のおける会計帳簿又は原始記録によるのではなく、請求書の一部、領収証の一部及び原告作成のメモのみという、著しく信頼を欠く証拠によってのみ立証しようとしている。

したがって、原告主張の営業所得の金額を実額で認定することはできない。

第三争点の判断

一  調査手続の適法性(争点1)

所得税法二三四条一項は、税務署等の調査権限を有する税務職員において、諸般の具体的事情にかんがみ、客観的必要があると判断される場合に、質問し、検査を行う権限を認めたものである。

この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等の実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限のある税務職員の合理的な選択に委ねられている。また、実施の日時場所の事前通知、調査の理由及び必要性の個別的、具体的な告知は、質問検査を行ううえの法律上一律の要件とされているものではない(最裁昭四八・七・一〇刑集二七巻七号一二一一頁、最判昭五八・七・一四訟務月報三〇巻一号一五一頁)。

そして、税務調査の客観的必要性や調査の客観的理由とは、調査が納税義務の適正、公平な実現を確保することにある以上、申告の真実性及び正確性を確かめることで足りる。

また、いわゆる反面調査について、特に納税義務者の承諾を得る必要も、時期的制限もなく、右の質問検査を必要とする客観的理由が存在する限り、右の要件の下に質問検査権行使の一つとして反面調査を行うことができる。

その際、原告の主張するように、最初から税務職員に、的確な納税義務者の取引先の把握を求めることは、税務職員に不可能を強いることであり、反面調査が納税義務者の真の取引先以外の者に及んでも、それだけで直ちに調査が違法になるわけではない。

そして、本件においては、原告主張の事前通知、調査年分の告知等及び調査理由の開示をしないこと並びに被告が一方的に調査期日を指定し、同調査に応じないとして原告の承諾なく反面調査を行ったことなどにつき、調査担当職員に裁量権の濫用があるとか、本件調査の方法や程度が、原告との利益衡量において、社会通念上相当な限度を超え違法であるとすべき事実は、本件全証拠によるも認めることはできない。

よって、原告の主張1は失当である。

二  本件各処分における推計の必要性(争点2)

証拠(乙六、証人勝山隆弘、原告(一部))及び弁論の全趣旨によれば、被告の主張2(一)のとおり、原告の職員に対する税務調査非協力の事実、及び、被告が、社会通念上当然に要求される程度の努力をしても、原告の本件係争各年分の各所得税を算出するについて、実額計算によることができず、推計課税を行う必要があったことが認められる。これに対し、原告は、職員は、無口な原告の性格を勝手に調査非協力と思い込み、ほとんど原告自身に対する調査は行わずに反面調査を進めたと主張し、同主張に沿う原告本人尋問の結果(一部)もあるが、右認定事実に照らして、たやすく信用できないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

三  本件各処分における推計の合理性(争点3)

1  同業者の抽出経緯

(一) 証拠(乙一ないし三(各枝番を含む)、八、九、一五、一六、一七及び一八(各枝番を含む)、証人西口伸彦)及び弁論の全趣旨によれば、被告の主張3(一)の事実が認められる。

右同業者の抽出基準は、業種、業態の点で同業者の類似性を判別する要件として合理的なものである。また、その抽出作業について、被告、抽出同業者を管轄する税務署員及び大阪国税局長の恣意の介在する余地は認められず、かつ、右調査の結果の数値は青色申告書に基づいたもので、その申告は確定しており信頼性が高い。

したがって、右同業者の売上原価率及び算出所得率を基礎に算出された原告の本件係争各年分の所得金額の推計には、特段の事情のない限り合理性があるものということができる。

(二) ところで、原告は、被告が抽出した同業者は、次のとおり、原告とは業種、業態が異なることを理由に、右同業者の算出所得率により原告の算出所得額を推計するという推計方法は合理性がないと主張しているので、原告の右主張について検討する。

(1) 原告は、原告が個人事業者であるのに対し、本件抽出同業者は法人事業者であるからその事業形態が大きく異なるとする。

しかしながら、事業を営む者は、法人格を有する者であろうと個人事業者であろうと、利潤追求を目的とすることに変わりはないから、事業形態に本質的な差異はない。

確かに、個人と法人とで会計処理上の差異はあるが、これは、所得税法の規定に基づき合理的な調整を加えることにより修正可能である。

そして、証拠(証人西口伸彦)及び弁論の全趣旨によれば、本件では、別紙7の1ないし7、同8、9のとおり、税法上の取扱いの違いについて、同業者である法人の事業所得の計算(決算)を所得税法の規定に基づいて、合理的に調整を行い、右差異を修正している。

したがって、原告の右主張は理由がない。

(2) さらに、原告は、ソレノイド受注製造の事業全体に占める割合等に基づく、抽出同業者との業種、業態の相違を主張する。

イ しかし、原告が、自己はソレノイド受注製造の専業であるのに対し、抽出同業者は他の電気部品組立製造との兼業であり、抽出同業者はソレノイドの売上高より他の電気部品組立製造の売上高の方が著しく多いと主張するのは、次のとおり理由がない。

すなわち、後記のとおり、原告は、自己のすべての売上金額を実額で実証していない。したがって、原告の総売上高に対するソレノイドの売上割合は不明であり、抽出同業者の前記割合と原告のそれとは比較することができない。そうすると、前記割合や所得率が異なるとして、原告と抽出同業者との業種、業態の同一性を否定する原告の主張は、その前提において理由がない。

ロ また、原告は、ソレノイドの受注製造は電気部品製造業のなかでも極めて利益率が低いと主張し、右主張に沿う証拠(甲八二三)を提出し、原告本人尋問において、その旨を供述する。

しかし、右証拠及び原告本人尋問の結果は、記載の内容、供述とも抽象的であり、客観的で的確な裏付け証拠に欠け、たやすく信用できないし、他にこれを認めるに足りる的確な証拠はなく、原告主張の事実は認定できない。

そうすると、ソレノイドの売上が総売上高に占める割合が高いほど利益率が低くなることを前提に、ソレノイドの受注製造以外の電気部品組立を行っている同業者の算出所得率を用いた推計方法には合理性がないとする原告の主張も、その前提において理由がない。

ハ さらに、仮に右の点はおくとしても、推計課税は、原告の帳簿書類の不備や所得調査に対する非協力による帳簿書類の不提示などにより、所得が実額により把握できない場合に、推計により得られた近似値をもって課税する方法である。しかも、推計課税は、調査により税務職員が把握した、限られた納税義務者に関する基礎資料をもとに、抽出条件を選別し、類似した同業者を抽出する作業であるから、納税義務者と限りなく類似した同業者を抽出することは、必ずしも期待できない。そうすると、同業者を抽出する作業の経緯に格別不自然、不合理な点がなく、合理的と認められる条件により類似する業者が抽出されている限り、当該推計による課税は合理性を有する。

本件においては、被告及び大阪国税局長は、別紙4のとおり、電気部品の組立製造を業とすること、ソレノイドの受注製造を行っていること、有償で材料の支給を受けていることという原告と抽出同業者の業種、業態の類似性を担保する合理的な抽象条件を挙げて本件抽出作業を行い、しかも、被告らの抽出作業過程にも、右(一)のとおり、格別不自然、不合理な点はない。

そうすると、原告が主張する業種、業態の問題は、原告と抽出同業者の業種、業態の類似性を否定するものではなく、本件推計は合理性を有する。

(三) 原告は、原告と抽出同業者の事業年度の期間が違うことから、抽出同業者の算出所得率は利用できないと主張する。

しかし、前記のとおり、推計課税の趣旨によれば、抽出される同業者は、業種、業態、営業規模等において、納税義務者と限りなく類似する必要はない。

そして、証拠(乙一の3、二の2、三の2)によれば、事業年度の期間の始期と終期の違いは、二、三か月であることが認められ、右認定事実に、前記のとおり、本件抽出条件が合理的であること及び本件抽出作業が正当であることを考え併せれば、本件抽出同業者の算出所得率をもとに推計課税を行っても不合理ではなく、原告の主張は認められない。

2  推計による営業所得金額の計算

(一) 売上金額

当事者間に争いがなく、別紙10の〈1〉「売上金額」欄記載のとおり認められる。

(二) 算出所得金額

右認定の売上金額に、前記1(一)認定の本件各算出所得率(被告の主張3(一))を乗じて得られる原告の算出所得金額は、別紙10の〈3〉「算出所得金額」欄記載とおり、被告の主張額と同額である。

(三) 特別経費の額

(1) 建物減価償却費

イ 減価償却の計算方法については、当事者間に争いがない。

ロ 居宅兼作業場の事業用割合については、原告は明らかに争っておらず、自白したものとみなされる(擬制自白)。

ハ 証拠(乙一〇、一一、一二)によれば、本件係争各年当時の、原告の事業にかかる所有建物及びその取得価格は、被告主張のとおり認められる。

ところで、原告は、倉庫(未登記)は本件係争各年前に取り壊されているから、右倉庫の建物減価償却費は計上できず、他方、本件係争各年当時には、昭和四五年に立てられた居宅兼作業場(甲八二五)があったから、これについて建物減価償却費が計上されなければならないと主張する。

しかし、原告が右主張を証明するために提出した証拠を検討するに、証拠(甲九六二)は、本件係争各年当時に作成された文書ではないし、文面上も当時の原告所有の建物の状況を証明しているものでもなく、その他の証拠(甲八二四、九五九ないし九六一、原告本人)も、原告の右主張を的確に裏付けるものではない。

確かに、証拠(甲八二五)によれば、右居宅兼作業場(甲八二五)が本件係争年当時に存在していたことは認められる。しかし、そのことから直ちに、右倉庫が本件係争各年前に取り壊されていたと推認することはできない。

そして、原告が主張する右居宅兼作業場(甲八二五)の建物減価償却費は、後記のとおり、原告が、同経費を実額で証明できない以上、同経費を特別経費として認定することはできない。

ニ そうすると、建物減価償却費は、被告の主張のとおり認められ、別紙10の〈4〉「建物減価償却費」欄記載の額となる。

(2) 利子割引料

当事者間に争いがなく、その金額は、別紙10の〈5〉「利子割引料」欄記載のとおりである。

(四) 農業所得金額の計算

当事者間に争いがなく、その金額は、別紙10の〈8〉「農業所得金額」欄記載のとおりである。

(五) 総(事業)所得金額

原告の本件係争各年分の総(事業)所得金額は、前記(二)の算出所得金額から、(三)の各特別経費を控除した営業所得金額と(四)の農業所得金額とを合算して得られた金額であり、被告の主張のとおり、昭和五九年分が七一四万四一八九円、昭和六〇年分が八四二万九〇三二円となる(別紙10の〈9〉「総(事業)所得金額」欄)。

四  実額反証(争点4)

1  実額反証の検討

原告は、その主張4において、本件係争各年分につき、売上金額、売上原価及び必要経費の実額の主張をしているので、原告の右主張について検討する。

そもそも、所得実額の主張をもって、右三2認定の被告の推計を争うためには、売上及び経費の双方について洩れのない全ての実額を主張立証して、正確な洩れのない所得の実額を証明する必要がある。すなわち、前記二認定説示のとおり、本件各処分における推計につきその必要性が認められる以上、原告が所得の実額を主張して課税庁のした右推計の合理性を否定するには、その主張する収入金額が全ての取引先からの全ての取引についての捕捉洩れのない総収入金額であり、かつ、その収入と対応する必要経費が実際に支出され、当該事業と関連性を有することを合理的な疑いを容れない程度にまで主張、立証しなければならない。

2  本件係争各年分の総売上額の検討

(一) 原告は、本件係争各年分の売上金額については、被告が反面調査によって把握し得た売上金額と同額の主張をするにすぎない。

そして、証拠(甲八〇四、八〇五、乙五の1ないし3、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 原告は、本件係争各年中、売上及び経費について、伝票等による計算や会計管理をすることはあっても、原始記録に基づく網羅的普遍的な会計帳簿を作成することはなかった。

(2) 原告は、星電精工からソレノイドの製造を受注する際、発注書や材料の納品書を受領し、製品納品時には星電精工に納品書を渡しているところ、本件訴訟においては、個々の売上及び仕入れの裏付けとなる納品書、発注書、伝票、請求書などの原始記録を提出しない。

(3) 原告は、従前、昭和五九年分の八栄電機に対する売上金額は、原告の預金口座(甲八〇四、八〇五)に入金された金額がすべてであるとして当初の実額主張をしていたところ、本件訴訟中に、被告が行った八栄電気に対する反面調査により、原告主張額を超える売上が明らかになった。

このため原告は、昭和五九年分の売上金額を被告主張額と同額に訂正した。

(二) 右(一)認定事実のとおり、本件において、原告は、個別継続的な記録である帳簿はつけていないし、当然にあるはずの原始記録も提出せず、本件訴訟中に一部売上が判明したなどの事実が認められ、右認定事実に、原告の売上金額の実額主張は、全て被告の反面調査による資料によるものであるが、課税庁の反面調査による売上金額の把握には、その性質上限界があり、把握洩れの生じる蓋然性が高いことを併せ考えれば、原告の主張する収入金額が、すべての取引先からの、捕捉洩れのない総収入金額であると直ちには認められない。

もっとも、原告は、前記の八栄電機に対する売上を除き、本件係争各年分の売上先は、星電精工に限られるし、その売上金額は、被告の反面調査により把握された金額と同じであると主張し、その旨に沿う原告本人尋問の結果もあるが、裏付け資料を欠く右供述はたやすく信用できないし、他に右認定を左右するに足りる的確な証拠はない。

3  本件係争各年分の総必要経費の検討

右のとおり、本件においては、係争各年分の総収入金額の立証が尽くされていない以上、仮に、係争各年分の経費の実額が立証されたとしても、同経費実額の立証によって、被告の前記推計に基づく課税を覆すには足りないところ、その点をおくとしても、原告による経費実額の主張は、次のとおり、立証が尽くされたと認め難い。

(一) 減価償却費(昭和五九年分が三〇九万八二七四円、昭和六〇年分が三三六万二〇九九円)について

(1) 「固定資産の減価償却の明細」と題する書面(甲五二、五三四)の証明力について

原告は、「固定資産の減価償却の明細」と題する書面(甲五二、五三四、以下「減価償却明細表」という。)に基づき減価償却費の実額を主張する。

しかし、原告本人尋問の結果によれば、昭和五九年分の減価償却明細表(甲五二)は、本件係争各年当時ではなく、本件について審査請求ないし提訴のあった昭和六三年頃に作成されたこと、右明細表を作成する際、固定資産の種類、その取得年月日及び取得価額は、帳簿書類等の記録ではなく、原告の記憶に基づいて記載されたことが認められ、右認定事実を考え併せると、右減価償却明細表(甲五二)は、昭和五九年分の減価償却費を正確に記載しているといえない。

また、昭和六〇年分の減価償却明細表(甲五三四)も、昭和五九年分の減価償却明細表(甲五二)と書面作成者、時期、作成方法は同じであると認められ、前同様、右減価償却明細表(甲五三四)も信用できない。

(2) 機械及び建物(一棟分)の減価償却費について

原告本人尋問の結果によると、原告は、減価償却明細表(甲五二)の1ないし7番記載の機械及び昭和四五年に新築した同表1番の建物(甲八二五)について、購入時の請求書や領収証を保管しておらず、購入価格に関するメモも存在しないことが認められ、それに、右のとおり、原告は、減価償却明細表(甲五二、五三四)は信用できないことを考え併せると、右各減価償却費を裏付ける的確な証拠はないと判断するのが相当であり、原告の主張は認められない。

(3) 他の建物の減価償却費について

原告は、減価償却明細表(甲五二、五三四)記載の建物のうち、原告が昭和五三年七月に取得したと主張する2番の建物(以下「当該建物」という。)の取得価額について、原始記録である領収証及び請求書等(甲八二七ないし八八〇)を提出し、これに記載された領収金額若しくは請求金額に基づき、当該建物全体の建築費用を算出した上で、当該建物の全体の床面積のうちに占める作業場部分の床面積の割合(以下「事業専用割合」という。)を乗じた金額により、減価償却費を算定している。

しかしながら、原告主張に係る当該建物の減価償却費(特に建物の取得価格)には、次のとおりの疑問があり認められない。

イ 証拠(甲八三七、八五六ないし八五八、八六八ないし八七〇、原告本人)によれば、原告が、当該建物全体の建築費用の裏付けとして提出した領収証及び請求書の中には、同一の支出を裏付けるものが重複して含まれている(甲第八五六号証及び八五七号証の請求書が、甲第八六八号証ないし八七〇号証の領収証に対応し、また、甲第八五九号証の仮領収証が、甲第八三七号証の領収証に対応する。)。

そこで、右領収書等を証拠として原告の主張する当該建物全体の建築費用は、その分水増しが行われていると疑われる。

そして、他の領収証と重複することが明らかな甲第八五六号証、八五七号証及び八五九号証を除外して、原告提出に係る領収証及び請求書記載の金額を合計し、当該建物全体の建築費用を算出すると二一四五万六三八円となるが、これは、原告主張の当該建物の取得価額一二八二万二七三四円を作業場部分の割合である〇・五若しくは〇・五〇七三で割り戻した額、すなわち、当該建物全体の建築費用(約二五二七万円)とかけはなれた数値となる。

ロ 原告提出にかかる請求書及び領収証の中には、当該建物全体の建築費用のうち、そもそも減価償却費の計算の対象とならない家事使用部分だけに充てられた支出に関するものが含まれている(甲八四六ないし八四九、八五六、八五七、八六四、八六五、八七三、八七四)。

すなわち、当該建物の一階部分は居宅として利用されているところ、右請求書及び領収証は、一階部分の建具、欄間、収納庫、庭の造作などの代金支払にかかるものであり、右請求書及び領収証に記載されている支出部分は、減価償却費の計算の対象とならない。

(4) 以上のとおり、原告が主張する減価償却費の支出は、不明確、不正確な点が多く、信用できないものであって認められない。

(二) 給料賃金(昭和五九年分が二二一万六〇八九円、昭和六〇年分が四六〇万七一三〇円)について

原告は、給与賃金明細表(甲六一、六二、五四三)及びタイムカード(甲六三ないし一一三、五四四ないし六一五)に基づき、本件係争各年分における給料賃金の実額を主張しているので、原告の右主張について検討する。

(1) 証拠(甲六三ないし一一三、五四四ないし六一五、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、右タイムカードにつき次の事実が認められる。

イ 原告は、タイムカード(甲六〇六、五六五、五五一)の作成年月日欄の数字を、本件係争各年分前の数字から本件係争各年分の数字に改ざんしたうえ、証拠として提出している。

ロ 原告は、タイムレコーダーを備えていないが、原告提出に係るタイムカードの中には、機械により出勤、退出時間が刻印されているものがある(甲八〇、八四、八八、九四、九八、一〇〇、一〇三、一〇六、一〇九、一一二)。

ハ 原告提出に係るタイムカードには、「ニッポンタイムカード六二五」及び「アマノCカード」の二種類の様式が存在するが、機械打ちされたタイムカードは、全て「アマノCカード」の様式が使用されている。

ニ 原告は、右二種類のタイムカードを購入した記憶がない。

ホ 原告提出に係るタイムカードには、タイムカードに記載された労働時間数の合計が、原告主張の給料賃金の基礎となる労働時間数よりも少ないものがある(甲六四、六七、六九)。

なお、右労働時間数の合計と昭和五九年分給与賃金明細表(甲六二)記載の数字は一致する。

ヘ 原告が主張する給料賃金の受給者の中には、氏名や住所が不明なものが数多く存在する。

(2) 右(1)認定事実によれば、原告が、給料賃金の原始記録として提出したタイムカードには、偽造されたもの、他の事業所に勤務する従業員用のもの、カード作成者、作成目的が不明なもの及び雇人の給料の一か月合計金額が不正確で、毎日の給料額を合計した金額より多いものが認められ、これらの事実を総合すれば、原告は、給料賃金の経費を水増しするために、多数のタイムカードに種々の偽装を行った疑いがある。

そうすると、原告の提出にかかるタイムカードは信用できないといわざるを得ない。

(3) そうすると、原告本人尋問の結果によれば、右タイムカードを集計して作成されていると認められる給与賃金明細表(甲六二、五四三)は、右のとおり、タイムカード全体が信用できない以上、右明細表も信用できない。

また、初更(甲六一、原告本人)によれば、給与賃金明細表(甲六一)は、本件係争各年当時ではなく、本件について審査請求ないし提訴のあった昭和六三年頃に作成されたこと、右明細表を作成する際の原始資料の存在、内容は明らかでないことが認められ、右認定事実を考え併せれば、右明細表の作成方法に関し、原告が記憶に新しい時に給料の支払事実を書き留めたとか、正確な原始記録から書き移したものであるとかの事実は認められず、そうすると、右明細表も信用性に欠ける。

そうすると、原告主張の給料賃金の支出は、その他に同支出を裏付ける的確な証拠がない以上、認められない。

(三) 外注費(昭和五九年分が一八一五万五二八三円、昭和六〇年分が一九六一万二一五七円)について

(1) 原告は、内職支払明細表(甲一一八、六一六)、請求書(甲一一九ないし一三四、一四五ないし一五九、六一七ないし六四四)、振込金受取書(甲一三五ないし一四四)に基づき、本件係争各年分における外注費の実額を主張する。

イ しかし、原告本人尋問の結果によれば、内職支払明細表(甲一一八、六一六)は、前記減価償却明細書及び給与賃金明細表と同じく、昭和六三年頃に作成されていること、原告は、右明細表の原始記録は現存するが、未だに本件訴訟上、証拠として提出していない旨供述していることが認められる。そして、右認定事実を考え併せれば、右明細表の作成方法に関しても、原告が記憶に新しい時に給料の支払事実を書き留めたとか、正確な原始記録から書き移したものであるとかの事実は認められず、そうすると、右明細表も信用性に欠け、外注費の実額を裏付けるに足りない。

ロ また、原告提出に係る福山産業(京都府亀岡市大井町小金岐大門八-五所在)及び福嶋電機(京都府船井郡八木町八木小字草鹿一〇〇所在)作成の原告に対する請求書(甲一一九ないし一五九、六一七ないし六四四)は、これに対応する領収証がなく、右各請求書は、原告が実際に支出した金額の証拠にはならない。

ハ さらに、原告本人尋問の結果によれば、原告が、材料の提供及びその回収あるいは作業機械の貸付及びその回収のため、いわゆる内職回りをしていた事実が認められ、証拠(乙八、九)によれば、原告が行うソレノイドの受注製造は、図面等の秘密の保持を要求されるものであって、通常にもまして、住所氏名のわからない者を雇用したり、外注して賃金を支払うことは考えられないことが認められ、弁論の全趣旨によれば、原告は、多数の外注先(内職(右福山産業及び福嶋電機を除く零細な外注先))の氏名、住所を特定できない事実が認められる。

右認定事実を総合すると、原告が実際に外注先にソレノイドの製造を発注する際には、原告は外注先の氏名、住所を把握しているものと認められる。にもかかわらず、原告が外注先(内職)の多くについてその氏名、住所を特定できないのは、実際には、原告が自己の主張するとおりに外注をしていなかったためであると推認される。

(2) 右説示事実を総合すると、原告の主張する外注による支出は、振込金受取書(甲一三五ないし一四四)により認められる、昭和五九年分の福島電機に対する六五二万四四四〇円を除き、支出の事実を把握できず認められない(すなわち、昭和五九年分は、冒頭の一八一五万五二八三円から右額を減じた一一六三万八四三円が、実額により認められない外注費となる。)。

(四) 以上のとおり、原告は、原告の実額で主張している経費のうち、その大部分を占める減価償却費、給料賃金、外注費(右福島電機に対するものを除く)について、右経費を裏付ける的確な証拠を有していない。しかも、給料賃金に関しては、前記のとおり、証拠を捏造した疑いがある。

そうすると、原告の経費に関する主張は、もはや信用することができず、その余の経費について判断するまでもなく、原告の主張は認められない。

第四結論

このように、被告の推計には必要性、合理性が認められ、原告の実額反証には理由がない。そして、本件各処分は、前認定第三、三2(五)の各総(事業)所得金額の範囲内のものであって、いずれも適法であり、これに違法な点はない。

よって、原告の本件各請求は理由がないからいずれも棄却する。

(裁判長裁判官 松尾政行 裁判官 中村隆次 裁判官遠藤浩太郎は、転任のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 松尾政行)

別紙1 課税の経緯

別紙2

ソレノイドの売上の総売上高に占める割合

別紙3の1 昭和59年分一覧表

別紙3の2 昭和60年分一覧表

別紙4

(1) 青色申告により確定申告をしていること

(2) 電機部品の組立製造業以外の業種を兼業していないこと

(3) 材料の仕入れについて無償での支給がないこと

(4) 年間を通じて事業を継続して営んでいること

(5) 対象年分の事業所得について、不服申立て又は訴訟が係属中でないこと。

別紙5 同業者算出所得率

別紙6

1 売上金額について

同業者調査表の「売上金額」として、法人税の確定申告書に添付された損益計算書の科目に表示された金額に、雑収入(営業外収益の科目に計上された収入額)を加えた額を減算した。)

2 売上原価(役員報酬)について

同業者調査表の「売上原価」欄に、〈1〉本件同業者の決算書に記載された売上原価から、特別経費(建物原価償却費、利子割引料及び地代家賃)を除いた金額並びに〈2〉販売費及び一般管理費に計上された外注費及び雇人費(役員報酬、給料賃金及び雑給等)の金額の合計額を記載すること。

(なお、被告は、本件同業者の雇人費を個人換算するに当たり、雇人費のうち、事業者に相当する代表役員、その妻及び非常勤役員の報酬を減算した。)

3 一般経費について

大阪国税局長は、各税務署長に対し、本件同業者の決算書に記載された営業費用のうち、外注費及び雇人費(役員報酬、給料賃金及び雑給等)及び特別経費(建物減価償却費、利子割引料、地代家賃、貸倒金、税理士報酬、顧問料、退職金及び減価償却資産の除却損)を控除した金額を記載すること。

(なお、被告は、本件同業者の一般経費を個人換算するに当たり、別紙9記載のとおり、本件同業者が損金経理した租税公課のうち、所得税法上は必要経費に算入できないものを減算した。)

別紙7の1 法人確定申告書の個人換算表

別紙7の2 法人確定申告書の個人換算表

別紙7の3 法人確定申告書の個人換算表

別紙7の4 法人確定申告書の個人換算表

別紙7の5 法人確定申告書の個人換算表

別紙7の6 法人確定申告書の個人換算表

別紙8 本件同業者の雑収入の個人換算明細表

別紙9 本件同業者の雑収入の個人換算明細表

別紙10 総所得金額の計算

別紙11 建物減価償却費の計算

1 定額法による減価償却費の計算方法(所得税法施行令120条1項1号イ)

(算式)

2 本件における建物減価償却費の計算

(算式)

(1) 倉庫

(2) 居宅兼作業場

別紙12の1 利子割引料の明細

別紙12の2 利子割引料について

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